皆さんのセルフケア、主役としての医療参加

(「国民主役医療への道」町淳二・宮城征四郎編著 日本医療企画 2006年  からの抜粋です)

“Government of the people, by the people, for the people shall not perish from the earth”「人民の、人民による、人民のための政治を滅びさせてはならない」(Abraham Lincoln)


病気には縁がなかったが、健康や医療が気がかりなあなた:

「健康維持には何をしたらいいですか? 健康食品は放蕩に効きますか? 生活習慣病にならないためには、日常何に気をつければいいでしょうか? 健康状態をチェックしてくれる良い医師はどこにいるのでしょうか? 将来がんになったら大変です、何か予防法は? 早くがんを見つけるには、どういう方法があるのでしょうか?」


病気をして受けた治療に満足しているあなた:「よかったですね…。でも、もっと良い治療法があったかもしれませんね。どうすれば、あなたにとって最良の治療法がわかるのでしょうか? 今後、副作用などは出ないでしょうか? 再発予防には、どんな点に注意すればいいでしょうか?」

病気をして受けた治療に不満の多いあなた:

「治療の結果が好ましくない事への不満でしょうか? 病院、医師、それとも看護師に対する不満ですか? 今の不満を誰に訴えますか? どうしたら良い病院、良い医師にめぐり会えるのでしょうか?」


そのほかにもいろいろ知りたいあなた:

「あの先生、ほんとに専門医の資格があるの? 研修医に診察・治療されるのはいや? 医療費が削減されたけれど、今までどおりの医療を受けられるの? 患者の自己負担がだんだん増えているけれど、今後はどうなるの? 3分間診療は何とかならない? 優しい看護師に当たるかどうかは運不運? 薬を山ほど飲んでいるけれど、本当に必要なの? 医療事故は他人事? 病院や医師の情報はどうすれば手に入るの? 医師にどうしても言いたいことが言えない? この町村から医師がいなくなっている、どうしたらいいの? かかりつけ医って誰、どこにいるの? 救急の時、病院をたらい回しにされない? 夜中でもどんな時に子どもを救急室に連れて行くべき? おなかの手術、どうしよう? がんになったら必ず告知されるの? がんと言われたら、どうしたらいいの? がんの手術、ほかの治療法はないの? がんの疼痛に対する良い治療法はないの? ホスピスの事を知りたい? 性感染症かもしれないけど相談が怖い? 婦人科と泌尿器科、どうも恥ずかしくて行きにくい? セックス障害はあきらめる? 臓器移植と脳死の問題を知りたい? 転んで大ケガ、ひどい障害から回復できるの? メタボリックシンドロームって何、予防できるの? どんな食生活や運動が理想的? 人間ドックは受けたほうがいい?」


以上のように、医師や医療に関する質問・疑問は尽きません。また一方で、「患者様中心の医療を」などとあちこちで言われていますが、今日本の医療は一般国民、患者さんを最優先しているでしょうか?皆さんが本当に満足できる医療でしょうか? 「医療の主役は誰か?」という問いに、医療関係者はみな「患者様です」と言うでしょう。 皆さんもそう感じていますか? 「国民主役」の医療は、どうしたら達成できるのでしょうか?

患者さんが主役で、しかも皆さんが満足できる優れた医療を行うのは、医師や病医院、医療行政担当者など医療提供側だけの仕事(責任)でしょうか? 医師に”すべてお任せ”でいいのでしょうか? 医療を受ける患者さん、国民の皆さんができることはないのでしょうか?いや、すべきことがあるのではないですか? 誰もが「健康」でいたい、もし病気にかかれば最良の「医療」を受けたいと望みます。そのためには、”患者の権利とともに責務”を理解する必要があります。


 より健康になるために、より良い受領のために知るべきこと、できること、すべきこと、いろいろあるはずです。本書を読み終えたとき、皆さんは、


(1)日本の医師、医学・医療制度や関連情報そして医療の現状(特に医師の現状)

(2) より健康になるには、そして健康を維持するにはどうすればよいかを知ることができる、

(3)病気になる前に、個人として何か病気予防を実践できる、

(4)いざ自分や家族が病気になった時に適切に対処できる、

(5) より良い医師や病医院の選択、より良い受療の選択ができる、

(6) 医師や医療関係者とより対等な立場でのコミュニケーションが可能になる、

(7)受療者として、多くの疾患について役立つ知識を得られる、

(8) 医療における患者としての権利と責務を理解・実行し、医療に自ら参加できる、

(9)医師などの育成に協力できる、

(10) 患者・国民の医療への積極的な参加が医療の改善につながることを理解できる、

(11)日本の医療改革のために声をあげられる、といったことが期待できます。いや、期待だけでなく、皆さんがこれらのことを理解し実行することが、自らの健康・受療の向上、さらには日本の医療の改善に結びつきます。


本書は、以下のような内容で構成されています。

Ⅰ部:日米の医療に接した患者さん・家族の言葉

Ⅱ部:日米の医師育成・医療に精通した医師の提言

Ⅲ部:医師の教育・育成のあり方

Ⅳ部:日本の医療制度の現状と問題点

Ⅴ部:医療現場の注目点と問題点

Ⅵ部:健康・医療情報の見分け方・使いこなし方

Ⅶ部:主な疾患の標準的医療、最新治療そして予防法



 皆さんにお願いしたい最大のキーワードは「セルフケア」(Self-care)です。「セルフ」とは、もちろん皆さん自身のこと。「ケア」はすでに日本語としても使われており、英語の直訳では“世話する”“面倒を見る”ですが、医療で使う時は実はもっと深い意味が含まれます。ケア(Care)は、医療ではキュア(Cure)という言葉とよく対比されます。「キュア」は病気を治すこと、疾患を完治させることで、その対象は病気そのものです。一方、「ケア」は患者さんの身体的・精神的(心)な面のすべてを含みます。病気を治癒させることだけでなく、その過程で患者さんの気持ちを理解し共感し、苦しみや悩みを分かちあい和らげ、心までも癒してあげることが「ケア」です。「Caring physician(doctor)」と呼ばれることは、アメリカの医師にとって大きな喜びです。


 医療提供者は患者さんや家族のケアに全力を注ぐべきですが、国民の皆さんには自分自身のケア、「セルフケア」を実行していただきたいのです。では、どのようにすればセルフケアができるのでしょうか?

その答えは、本書にあります。「セルフケア」は、(1)健康の保持、(2)病気の予防は当然のこと、(3)病気にかかった時の対処、(4)より良い受療の仕方を身につけること、に役立ちます。さらには(5)医療参加への第一歩であり、(6)医療の改善(医療を救うこと)にも貢献します。


かかりつけ医のように患者さんを最初に診る医療を「プライマリ・ケア」と呼びますが、究極のプライマリ・ケアは「セルフケア」です。

しかもこれは、皆さんが自ら積極的に実行する必要があります。本書を読み終えたら、今日からセルフケアに取りかかってください。 医師・医療関係者の書く一般大衆向けの本、しかも健康づくりや受療に幅広く役立つ本を見たこと、読んだことはありますか? 私も含め医師の書く文章はとかく難しい単語が並び、一般の方には理解しにくくなってしまいがちです。今回、各章の執筆者の方々には、できるだけわかりやすく書いてもらいました。非常に多くのテーマをカバーするために計64 章にもなりました。各章の重要な点、特に皆さんへのアドバイスとなる有用なポイントは、それぞれの章の中で“表”としてまとめてあるので、一度読んだ後に大切なことを知りたい場合には、これらの表に注目してください。また、重要な内容や用語を詳しく説明した章がほかにある場合は(○章参照)と記してあるので、参考にしてください。


浮き彫りにするための日米の比較などで、各章の内容の一貫性をできるだけ保つ意図があります。このコメントの一番の目的も、皆さんに自分の健康、日本の医療をより深く考え、「セルフケア」をすぐにでも実践し、医療に参加できるように役立てていただくことです。


 冒頭の言葉は、“奴隷解放”で有名な元米国大統領、アブラハム・リンカーンの1863 年、ゲティスバーグでの演説です。140 年たった今も、生きた言葉です。この言葉の「人民」を「私」または「国民」、「政治」を「健康」または「医療」にそれぞれ置き換えてみてください。

「私の、私による、私のための健康」(セルフケアによる個人の健康)「国民の、国民による、国民のための医療」(セルフケアの周知徹底や医療への意識・姿勢の改革、医療への参加を通して、国民皆のために皆で構築する医療)これらの実現を目標に本書は書かれました。


 最後に私的な話になりますが、本書の編集中、父が86 歳で他界しました。50 歳まで外科医、その後漢方医として84 歳まで患者さんを診ていましたが、晩年、父の診療は患者さんに対しての生活指導(食事、運動、睡眠、呼吸、排便、仕事と休養など)そして心のケアを心がけていました。自分自身も肝炎から発生した肝がんと10 年ほど闘った患者でもあり、自らの生活習慣も常に正していました。がんとともに生きながら、本人も満足していた人生を全うできたのも、自分自身のケアに負うところが大だったと思われます。自らも患者としての「セルフケア」を実践し、患者さんにも「セルフケア」の指導をしていた父でした。本書の完成を見ることはできませんでしたが、そんな父に本書を捧げます。

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コメント: 1
  • #1

    米山 繁 (木曜日, 20 4月 2017 22:59)

    町先生!
    私は25年前に腎細胞がんを患い、町秀夫先生に出逢い命を救われました。本当に本当に感謝でいっぱいです。
    素晴らしい出逢いは生涯忘れられません。現在60歳を過ぎましたが私はとても元気です!ちなみに同年齢の方よりも・・・そしてその時にしていただいたご指導、永久置鍼などのおかげと確信しています。探し求めても町先生のような素晴らしい方には二度と出逢えないと思っています。この広い宇宙で、あのときあの場所、横浜の山手診療所でであえた奇跡に感謝しています。
    町淳二先生はその息子さんと知り、とても嬉しくそして、感謝をお伝えしたくメール致しました。
    これがお目にとまりますことを願って・・・送信します。
    治療には何度お礼してもしきれないほどの大きな愛情をかけていただき・・・心より感動いたしました。
    感謝!ありがとうございました!
    追伸・・・是非ともその遺志を継承し続けて多くの人を救っていって下さい。あの、置鍼はノーベル賞ものです!素晴らしい!生き証人も沢山いると思いますよ。私はそのうちの一人です。
    合掌・・・米山